デュエプレグランプリ2025
メタゲームブレイクダウン
ライター:河野 真成(神結)

決勝戦は、奇しくも前回のグランプリを再現するかのような「アウトレイジ vs. ヘブンズ・ゲート」の戦いとなった。
その戦いの行く末を、大モニターの前に集まった軽く800人は超えていただろうデュエプレプレイヤーたちが、時に歓声を、時に拍手を交えて見守っていた。
決勝2本目。
《奇天烈 シャッフ》らの妨害によってバルガ/Bloomの動きが止められる中、《単騎連射 マグナム》と《奇天烈 シャッフ》を揃え、《絶超合金 ロビンフッド》が動き、最後に《拳仙一丸 しずく&ドラポン》が駆け抜ける。
Runoの妹がその栄冠を掴んだ瞬間だった。

そんな2025年のデュエプレグランプリは、会場も幕張メッセとなり、プレイヤー数も昨年から大幅に拡大して約2000人以上が参加した。
予選の対戦から非常に白熱したもの多かったので、気になる方はぜひとも 配信アーカイブ を追い掛けて欲しい。
そんな計7回の予選を終え、本戦へと進出した128名のデッキ分布は以下の通りである。
27 火水カツマスター
18 メタリカ
14 5色ドギラゴン剣
10 ジョーカーズ
9 エイリアン
8 水闇フェリックス・ミザリィ
7 火光アポロ
6 光水ヘブンズ・ゲート
6 ネロ・グリフィスⅢ世
5 ライゾウ「灼」
5 5色耐久
2 火闇ドルマゲドンX
2 火闇ドギラゴン剣(《超無限神星アポロヌス・アガペリオス》入り)
2 光水闇ミラダンテⅫ
2 ハンター
2 水単VV-8
1 ビートジョッキー
1 ハムカツ団
1 MDWドギラゴン剣
【火水カツマスター】が頭1つ抜けてはいるものの、前評判通り非常に多くのデッキが活躍したという印象を受ける。
また、その中でTOP8は以下のようなトーナメントとなった。
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では今回活躍したデッキについて、順番に確認していこう。
火水カツマスター

本戦進出数もTOP8入賞率も1位で、更に優勝まで果たした【火水カツマスター】が、今大会の主役だったのは間違いない。
中でも多くのプレイヤーが選択したのが《プラチナ・ワルスラS》を採用したタイプである。

このデッキの王道ムーブと言えば、3ターン目に《プラチナ・ワルスラS》の攻撃を通し、手札を整えた上で残り3枚のシールドを《超法 カツドンGO!》+《EX秘伝カツトンファー》で詰めていく、というものである。


ドロン・ゴーの性質上、破壊するタイプのS・トリガーに強く、《EX秘伝カツトンファー》と組み合わせることで《閃光の守護者ホーリー》のような全体タップ系のトリガーを超えることも可能だ。どうしても超えられない呪文S・トリガーなどは、《奇天烈 シャッフ》などで補える。
また守りについても《終末の時計 ザ・クロック》はもちろん、《爆殺!! 覇悪怒楽苦》、そして《拳仙一丸 しずく&ドラポン》+《超合金 ロビー》などが存在しているためかなり固く、他のビートダウン(攻めを主体とするデッキ)との殴り合いにも負けない力を持っている。
こうした攻守共に優れた力があったことが今回の活躍に繋がったのは間違いない。
また優勝したRunoの妹のリストは《プラチナ・ワルスラS》ではなく《無法設計図》が採用されている。


こちらは2ターン目に手札を増やせる都合、3ターン目の《超合金 ロビー》を安定させやすい。
また相手のシールドを減らさず手札状況を良くできるため、受けるタイプのデッキに対してゆっくりとゲームを進めることも出来る。
それが決勝戦の対【光水闇ヘブンズ・ゲート】との戦いで勝利を呼び込んだ要因の1つとも言えるのではないだろうか。
メタリカ
【メタリカ】は本戦進出数が2位の18名。惜しくもTOP8には残らなかったものの、TOP16には2名が食い込んでいる。

【メタリカ】はコスト軽減やメタクリーチャー(相手の動きを妨害するクリーチャー)を駆使しつつ展開し、負けない盤面を築きあげるというデッキだ。
序盤は《一撃奪取 アクロアイト》と《一番隊 クリスタ》という2種の軽減クリーチャーや、《制御の翼 オリオティス》に《絶対の畏れ 防鎧》、更には《洗脳センノー》といったメタクリーチャーを展開しき、《龍装者 バーナイン》や《月の輝き 夢幻》といったカードでドローをしていく。


その後は《星の導き 翔天》で攻撃誘導と展開、《気高き魂 不動》で自軍を守る……といった形で盤面を築いていくことになる。ここまでくれば、《禁断 ~封印されしX~》のようなカードがない限り勝ちだろう。
また基本的には《洗脳センノー》とは選択となっているが、《ミラクル・ミラダンテ》を採用することで序盤に多少躓いても受けて返せるというタイプの構築もある。
事前インタビュー でも指摘されていたが、現環境で《禁断 ~封印されしX~》を使用するデッキは【5色ドギラゴン剣】と【火闇ドギラゴン剣】くらいであり、こうした苦手ギミックを搭載したデッキが少なかったことも今回の躍進に繋がったと言えるだろう。
ただ最終的にはTOP16でいずれも【ヘブンズ・ゲート】系のデッキに敗北。残念ながらTOP8入りは叶わなかった。
5色ドギラゴン剣
攻守のバランスという話でいうと、このデッキも【火水カツマスター】と同様に非常に高いと言えるのではないか?

今大会では、グノアが【5色ドギラゴン剣】を使用してTOP8となった。
序盤はブーストしつつマナに色を揃え、ビートダウンに対しては10数枚採用されたS・トリガーや《界王類邪龍目 ザ=デッドブラッキオ》で対応。
また動きの遅いデッキに対しては《絶叫の悪魔龍 イーヴィル・ヒート》などでこちらから攻め込むことも可能なのではないか?


そんなデッキの主役と言えるのは、もちろん《蒼き団長 ドギラゴン剣》。
《Mの悪魔龍 リンネビーナス》を経由することで《呪紋のカルマ インカ》や《奇天烈 シャッフ》など、相手のS・トリガーを封殺できるカードたちを添えて安全に攻撃することができる。
大会は様々なデッキと戦うことが想定されるため、こうした安全性の高いフィニッシュが出来るというのはデッキの大きな主張点と言える。
また相手視点で考えたとき、様々なカードが採用可能な【5色ドギラゴン剣】はリストが読みにくく、ケアしなければいけないカードの範囲が広い。想定外のカードをプレイされて負けてしまったというケースもあっただろう。
ただもちろん、5色デッキ故の採用バランスの難しさや色事故などによって、デッキの本来の力を発揮できずに敗れてしまったというケースもあった筈だ。
以上、本戦進出数が多かった上位3デッキである。
事前インタビュー等でも前評判の高かったデッキが比較的順当に予選を抜けたと言えるだろう。
ヘブンズ・ゲート系
なんとTOP8のうち2名が《ヘブンズ・ゲート》を採用したデッキだった。
前回大会で活躍したのは【光単ヘブンズ・ゲート】であったが、今回の大会では【ネロ・グリフィスⅢ世】を軸としたデッキが1名、そして【光水闇ヘブンズ・ゲート】と呼べるようなデッキが1名入賞している。

こちらは《魔光大帝ネロ・グリフィスⅢ世》を軸とした通称「ネロ天門」と呼ばれるデッキだ。


序盤は相手の手札を攻めて動きを遅らせつつ墓地に呪文を溜めていき、《魔光大帝ネロ・グリフィスⅢ世》の安全な着地を狙っていく。
その後も《特攻人形ジェニー》などを使い回しつつ、最終的には《黄昏魔弾Knights of Arcadia》という極魔弾を放ってゲームを決める。
このデッキの優れた点は環境トップデッキである【火水カツマスター】に強い点にある。
手札破壊はドロン・ゴーを抱えたい【火水カツマスター】にはよく刺さり、《青音の精霊龍 リンガール》によってシールドの修復も可能で、そしてリソースを奪った後に現れる《魔光大帝ネロ・グリフィスⅢ世》はほぼ突破されない。
また上記のリストで注目すべきカードと言えるのが《Dの天牢 ジェイルハウスロック》だろう。

ドロン・ゴー軍団を破壊以外の手段で安全に飛ばすことが可能で、更に状況次第ではタップされているメタリカの軍勢や、或いは《大革命のD ワイルド・サファリ・チャンネル》を貼り返すことで【5色耐久】系のデッキへの強力な勝ち筋となっている。
また惜しくも準優勝となったバルガ/Bloomが使用した《ヘブンズ・ゲート》は《魔光大帝ネロ・グリフィスⅢ世》ではなく、ブロッカーの光のドラゴンを出しつつ《時の法皇 ミラダンテXII》でフィニッシュするという、かつての【ロージアダンテ】に近い構想のデッキである。

序盤の妨害こそほぼないものの、《デモンズ・ライト》がかなり強力で、これで相手の展開を抑制しつつ、《ドラゴンズ・サイン》や《音感の精霊龍 エメラルーダ》から切り返していくといったデッキとなっている。
ちなみに決勝戦では《奇天烈 シャッフ》に対して《デモンズ・ライト》を当てるといった熱い攻防があり、こちらは必見である。まだの方は アーカイブ からぜひ。
またTOP8には残らなかったものの、予選で活躍を見せたデッキについても軽く触れていこう。
ジョーカーズ
【火水カツマスター】と並んで前評判が比較的高かった【ジョーカーズ】だったが、今大会ではTOP16に1名と、やや不本意な結果に終わったか。

先述としては新種族デッキらしく《ヤッタレマン》という軽減クリーチャーを軸に展開し、フィニッシャーに繋げていくというシンプルな構造である。 その中でメタクリーチャーである《洗脳センノー》を使いやすいのが【ジョーカーズ】の魅力と言えるだろう。

一方でS・トリガーの枚数には不安を抱えており《戦慄のプレリュード》+《「誣」の頂 ウェディング・イノセンス》などを採用していると枚数を落とさざるを得ず、逆にS・トリガーの枚数を積むと上記のパッケージを採用するのが厳しいことから、こちらがS・トリガーを突破しにくくなる……といったジレンマに陥ってしまう。
こうした問題について、綺麗な回答を見つけ出すのが現在のジョーカーズのカードプールだと難しいこともあり、結果として【火水カツマスター】や【5色ドギラゴン剣】といった方のデッキを選択したプレイヤーも多かったのではないだろうか。
エイリアン

【エイリアン】はグランプリ直前の上方修正にて強化を貰ったデッキである。
《隷騎士ガガ・ヴォイジャー》でコスト軽減できる対象が広がったことで序盤の展開をしやすくなり、それが《凶骨の魔将ザビ・クエイクス》の出力上昇にも繋がっている。
また《悪魔神王ディス・バルカミラ》は現環境ではかなり珍しいタイプのカードで、全体除去と呪文ロックといういずれも強力な能力を持ったフィニッシャーである。

手札破壊+除去は対【火水カツマスター】攻略の鍵であり、【エイリアン】はその条件を満たしていたと考えてよいのではないだろうか。
また《夏の日王女プリン》のお陰で《蒼き団長 ドギラゴン剣》への耐性もあり、展開系のデッキに対しても《無防備のザビ キナコ》などで対処できることから、全体的に広く勝てるデッキだったと言えただろう。
こちらも残念ながらTOP8には残らなかったが、前評判以上に結果を残したという印象である。
フェリックス・ミザリィ
今回の上位賞カードであった《フェリックス・ミザリィ》だが、残念ながら【フェニックス・ミザリィ】のデッキはTOP8に残ることは叶わなかった。

非常に使用難易度の高いデッキで、《フェリックス・ミザリィ》の進化元を維持しつつも《学校男》などで対処しないといけない時もある。

また相手をコントロールするのか早期の攻撃で倒し切ってしまうのかという大局的な視点での判断を問われることもある。
現在の上位デッキはいずれも中々今日明日で使いこなせるというデッキは少ないのだが、その中でも【フェニックス・ミザリィ】はより使い手の力量が問われるといったデッキで、そういった意味では本戦進出数については納得の数字と言えるだろうか。
決して多くはないものの、歴戦のプレイヤーたちがしっかり結果を残し、予選を抜けた。
またグランプリが終わり来期以降の練習をできるというタイミングでもあるので、これを機に触ってみるというのも悪くないかもしれない。
その他

【火光アポロ】は事前の予想通り一定数のプレイヤーが使用し、本戦進出者も7名とまずまずの結果を残した。
ただ最後まで駆け抜けるのは厳しかったようで、TOP16の段階では既に全員が敗退する結果となっている。

配信を賑わせたデッキと言えば、【ライゾウ「灼」】が名試合を魅せてくれた。
使用したのは覚醒颯。配信卓に現れると勝ち筋をしっかりと追求したプレイを見せ、最後の最後に《音階の精霊龍 コルティオール》のS・トリガーから大逆転。

これには大モニターの前で観戦していたプレイヤーたちも湧きに湧き、この日もっともフロアを熱狂されたプレイヤーの1人だったと言って差し支えないだろう。

また【5色耐久】も根強い人気があるデッキで、《奇天烈 シャッフ》が飛び交う環境で中々向かい風には見えるが、しっかり一定数の使用者が本戦進出を果たしている。
以上がメタゲームの振り返りである。
最終盤、大モニターの前に設置された椅子は埋まり続け、その度にドンドンと増設されていった。しかし追加された椅子も次々と埋まっていく。会場には決勝を見守るべく多くのプレイヤーたちが残っていたのだ。
準決勝は、【火水カツマスター】のミラーマッチで、S・トリガーの演出の度に歓声が上がった。
そして始まった決勝戦。ドローで、そして《奇天烈 シャッフ》の数字の宣言に会場は盛り上がっていき、そして決着の瞬間には惜しみない拍手が送られた。
これこそが、プレイヤーたちによって作り上げられた、デュエプレのグランプリなのである。

今回参加できなかったというデュエプレプレイヤーの皆様も、次回はぜひ会場へ足を運んで欲しい。
きっとこのゲームを愛する全て人たちによって、最高の舞台が用意されている筈だ。