『デュエプレグランプリ2025』開催直前
メタゲーム予想
ライター:河野 真成(神結)

『デュエプレグランプリ2025』は来る9月6日に開催される。
昨年の5月に開催された第1回となる『デュエプレグランプリ 2024』の決勝は、デデンネの【光単ヘブンズ・ゲート】と小栗の【火水UKパンク】が激突。互いにデッキの持ち味を発した試合はフルセットまでもつれたが、最後はデデンネの好判断が光り、見事デデンネが初代王者に輝いた。
そこから1年と4ヶ月ほど。ドラグナーvsエグザイルvsヘブンズ・ゲートからはすっかり景色も変わった。
《轟く侵略 レッドゾーン》が駆け抜け、《蒼き団長 ドギラゴン剣》がファイナル革命を起こし、《「誣」の頂 ウェディング・イノセンス》が、そして《ジョリー・ザ・ジョニー》が、デュエプレに新しい時代を築いてきた。
・・・では、第2回となる今回のグランプリではどのような戦いが見られるのだろうか。
今回は事前メタゲーム調査ということで、3名の強豪プレイヤーたちのインタビューを交えながら考察・予想していこう。
現在の環境デッキたちを紹介
さて、グランプリの環境を予想するにあたって、まずは現在の環境デッキたちを抑えておく必要があるだろう。
そこで今回、環境デッキに非常に詳しそうな牛乳をお呼びし、話をしてもらうことにした。(以下、敬称略)
牛乳は「『強者』による『競技』デュエプレの『今日』を届けるYouTubeチャンネル」を掲げる「きょうプレ!」というYouTubeチャンネルにて環境について定期的に配信を行っている。また、牛乳本人も2024年度ランキング3位という実績持ちだ。
牛乳「大前提として、いまありえないくらい環境デッキが多いです」
要因は様々だが、「PLAY'S CHRONICLE PACK Ⅱ」の影響は大きいらしい。
牛乳「ここで登場したテーマデッキが、【火水カツマスター】を除いて前シーズンの軒並みパワー不足で環境上位に上がってこなかったんですけど、上方修正が入りまして。それによっていろんなデッキが環境上位に顔を覗かせるようになって、かなり混沌とした状況でグランプリが開幕するのは間違いないですね」
順に、例を挙げてもらった。
① 火水カツマスター
昨年のグランプリでも決勝を戦ったあの【火水UKパンク】が帰ってきた!……というわけでもないのだが、ドロン・ゴー戦術を軸としたのが【火水カツマスター】である。

基本的な動きとしては《プラチナ・ワルスラS》や《超合金 ロビー》などで手札を整えつつ、《超法 カツドンGO!》+《EX秘伝カツトンファー》で詰めていくデッキである。
攻撃終わりにドロン・ゴーを決めることで、相手のスパークトリガーなどがケア可能で、《超法 カツドンGO!》からのドロン・ゴー先も軒並み強い。
更にドロン・ゴーのお陰で盤面の取り合いで強く、受けトリガーも枚数が用意できることから守りも固く、攻守に優れたデッキと言えよう。
牛乳「特にいまは《奇天烈 シャッフ》が強くて、その《奇天烈 シャッフ》を使えるデッキとしても【火水カツマスター】は筆頭ですね。受けも強く、環境の中心だと言えます」
②ジョーカーズ
ストーリーも新章に突入したデュエプレだが、その新章の主人公たるデッキが【ジョーカーズ】だ。

小型のジョーカーズを展開しつつ、《ジョリー・ザ・ジョニー》と《「誣」の頂 ウェディング・イノセンス》という2つのフィニッシャーを用意することが可能で、非常に使いやすいデッキと言える。
牛乳「パッと見使いやすいデッキではありますが、《ジョリー・ザ・ジョニー》で選択する呪文とか、マスター・W・ブレイカーをどう使うかなど、突き詰めると奥が深いデッキとも言えますね。トリガーの枚数や選択も人によって個性の出るのも面白いところで、リストを見れば『そのリスト作成者が何を意識して組んだか』がわかると思います」
③5色ドギラゴン剣
現環境で《蒼き団長 ドギラゴン剣》を使ったデッキを挙げるなら、この【5色ドギラゴン剣】が筆頭になるだろう。

《呪紋のカルマ インカ》や《奇天烈 シャッフ》などで安全なフィニッシュを目指したデッキで、初動やトリガーの構成なども人によってリストがわかれるデッキである。
牛乳「ただ現状のリストだと、上方修正後に数を増やした【火光アポロ】が受からないので、《ドドンガ轟キャノン》を採用したりだとか、あるいは多色の枚数を減らしてでも《終末の時計 ザ・クロック》とか《閃光の守護者ホーリー》を積む、といった構築に変化しています。グランプリだと、【火光アポロ】を意識した構築が見られるでしょう」
④火光アポロ
上方修正後、環境に大きく台頭してきているのが《超無限神星アポロヌス・アガペリオス》を使った【火光アポロ】だ。

3ターン目に《双炎祭壇 アポロヌス・パトス》を展開し、4ターン目に《ケントゥリア・ドラゴン》を2枚、5ターン目にメタクリーチャー+《ケントゥリア・ドラゴン》で《超無限神星アポロヌス・アガペリオス》を降臨させてフィニッシュする…というのがコンセプトである。
牛乳「なんやかんや、今期のデッキって全部難しいんですよ。その中で【火光アポロ】はかなりわかりやすいので、救世主的なデッキではあると思いますね」
⑤メタリカ
前環境から強かった【メタリカ】も、引き続き環境上位にランクインしている。

展開と攻撃誘導によって相手を封じ込めて勝つデッキだが、このデッキも変化しているようだ。
牛乳「以前は《ミラクル・ミラダンテ》+《閃光の守護者ホーリー》っていうパッケージで切り返していたんですけど、今は《蒼き団長 ドギラゴン剣》やドロン・ゴーに対して有効な《洗脳センノー》を採用していることが多いです。ただ受けの切り返しを失った分、序盤の手札に大きく左右されるようになってしまった、というデメリットはあります」
⑥水闇ミザリィ
こちらも前環境から上位で活躍をしていたのが、コントロールとビートの組み合わせデッキと言える【水闇ミザリィ】だ。

《フェニックス・ミザリィ》を出して、そこから《凶鬼03号 ガシャゴズラ》で負けない盤面を形成しつつ、メタクリーチャーを残しながら詰めていくというのがこのデッキの基本的なプランと言える。
牛乳「盤面管理と墓地管理がシビアなデッキで、乗り手次第というデッキですね。特に《大獄の封殺ディアスZ》の採用後は蘇生なども含めて本当に細かな墓地管理が求められるようになりました」
⑦5色耐久
冷静に見ると奇怪なデッキ名だが、ともかく名がよく体を表しているのが【5色耐久】である。
やることはシンプルで、マナを伸ばして高コストクリーチャーでフィニッシュするというものである。

牛乳「【火光アポロ】が出て正直貫通されるケースが増えました。特に《超無限神星アポロヌス・アガペリオス》のランデスに上方修正が入ったのが厳しくて。以前は《獅子王の遺跡》でマナさえ伸びていれば除去トリガーで処理できたんですけど、今は全ランデスされてしまうので……」
⑧その他上方修正されたデッキなど
その他、上方修正されたデッキとしては【エイリアン】も注目されているようだ。

【エイリアン】はスタンダードな光水闇型の他に、最近では火が入った型も流行しているようだ。
牛乳「上方修正で《隷騎士ガガ・ヴォイジャー》がエイリアンなら何でも軽減してくれるようになったため、《悪魔神王ディス・バルカミラ》に繋げやすくなりました。まだ研究中のデッキなので、グランプリまでにどういった形になるかは注目したいです」

その他、同じく上方修正された【ハンター】も台頭しており、冒頭で牛乳が言った通りの「ありえないくらい環境デッキが多い」というのが実感できるところだろう。
ランクマッチの環境について
そんな多くのデッキがひしめく環境であるが、グランプリに参加予定のプレイヤーたちはランクマッチで日々腕を磨いていることだろう。
そうなれば、やはりランクマッチの環境を知ることがグランプリの環境を予想することに繋がるだろう。
もちろん膨大なランクマッチの情報を把握するのは困難ではあるが、今回は日々ランクマッチの配信を行っている丸小糸に話を聞いてみた。
①アップデート前
まず一旦、アップデート前の環境について確認しておこう。
丸小糸「上方修正が来る前の環境となると、軸となっていたのは【火水カツマスター】【ジョーカーズ】【5色ドギラゴン剣】の3つのデッキでした」
丸小糸「一方で【5色耐久】のような受けデッキですが、【火水カツマスター】【ジョーカーズ】【5色ドギラゴン剣】がそれぞれ“異なる攻撃手段”をもっていることもあって全て対応するのが難しく、試行回数で戦うランクマッチにおいてはそこまで流行している様子はなかったです」
より具体的に言うと、《EX秘伝カツトンファー》や《奇天烈 シャッフ》を絡めてくる【火水カツマスター】と《ジョリー・ザ・ジョニー 》の一発で仕留める【ジョーカーズ】、そして《蒼き団長 ドギラゴン剣》から多様なクリーチャーを展開する【5色ドギラゴン剣】は、それぞれ有効な受けは異なっており、受けデッキがそれら全てに対応することは不可能、というわけだ。
丸小糸「ただ長いランクマッチの期間を見るとそうなりますけど、短い期間で見ると『その日強いデッキ』というのは変わってきて、例えば前期ランクマッチの最終日はまさにそれで、その日は【5色耐久】の通りが良かったんですよね」
というように、ランクマッチ環境は日々小さな変化を積み重ねている。
②アップデート後
では改めて、アップデート後の環境はどういったものになっているのだろうか。
丸小糸「上方修正されたデッキだと【火光アポロ】【エイリアン】【ハンター】といったデッキだと思うんですが、中でも【火光アポロ】は目に見えて数が増えましたし、無視できなくなりました」

丸小糸「例えば【5色ドギラゴン剣】は受けトリガーの構成を変えざるを得なくて、《終末の時計 ザ・クロック》や《閃光の守護者ホーリー》といった【火光アポロ】が受かるカードを採用するケースが増えています。従来と比べると単色カードですし、除去札というわけでもないので《Mの悪魔龍 リンネビーナス》のマナ武装が達成しづらくなったり、《界王類邪龍目 ザ=デッドブラッキオ》の5色が用意できなくなったり、デッキとしては不器用になったという印象を受けています」
そして新カードの他にも、前期ランクマッチの最終結果もまた環境に影響をもたらしているという。
丸小糸「前期ランクマッチの1位が【火水カツマスター】だったのを受けて台頭してきたデッキに【ネロ天門】があります。こちらはハンデスとトリガーで【火水カツマスター】に有利ですし、更に【火光アポロ】にも耐性があるので、立ち位置がよく、ランクマッチでもよく見掛けるデッキになりました」

丸小糸「更にそれとは別に、【5色ドギラゴン剣】のトリガー傾向が変わったりとか、《伝説の禁断 ドキンダムX》系統のデッキが徐々に減少傾向になっていたので、それを受けて《伝説の禁断 ドキンダムX》系が苦手だけど【火光アポロ】に有利を取れる【メタリカ】も増加していました。」
丸小糸「さらにさらに、そうした【メタリカ】や【ネロ天門】の台頭を受けて、上方修正された【エイリアン】も増えています。上方修正としては一番地味ではあったんですが、《隷騎士ガガ・ヴォイジャー》が強くなったことで《凶骨の魔将ザビ・クエイクス》をより強く使えたり、あるいは展開系のデッキに対して《悪魔神王ディス・バルカミラ》が刺さるので、【エイリアン】の立ち位置が上がっていますね」

以下、体感ではあるがランクマッチのデッキを数の多いと感じた順にグループ分けしてもらったものである。
グループA:火水カツマスター、ジョーカーズ、5色ドギラゴン剣
グループB:ネロ天門、5色耐久、エイリアン、水闇ミザリィ、メタリカ
グループC:火光アポロ
丸小糸「ここで挙げていないデッキでも、レートでいうと1700くらいで対戦したりするので、環境を読むというのはかなり難しいですね。何のデッキが通るのか、という考察と、それがわかった上でそのデッキを使えるのかという話は、この膨大な量のデッキを考えると……」
丸小糸「グランプリの環境を考える上でも、攻撃を仕掛ける系のデッキを使いたい人が【ジョーカーズ】なのか【火光アポロ】なのか、ちょっと読めないなぁと思う部分はありますね」
以上のように、 “ありえないくらい多い環境デッキ”が互いに影響し合うことでランクマッチの環境はかなり複雑なものになっているようだ。
グランプリの環境もこうした現在のランクマッチが反映され、非常に多くのデッキが観測されるのは間違いなさそうだ。
公認大会の環境について
しかし、デュエプレの競技シーンはランクマッチだけではない。
ランクマッチと並行して公認大会も日々開催されており、白熱のランキングレースも繰り広げられているのだ。
そもそもランクマッチとグランプリの性質上、日々トレンドを追い掛けながらランクマッチを戦うプレイヤーよりも、そうでないプレイヤーの方が参加者としては多い筈なのだ。
更に実態として、ランクマッチよりも公認大会の方がグランプリという大会の形式と似ている部分が大きく、当然ながら公認大会の結果がグランプリに与える影響も大きいだろう。
そこで公認大会(ZweiLanceCUP)で解説なども務める、皆にお馴染みそーすやきそばに公認大会の実態や環境について聞いてみた。
そーすやきそば「公認大会はほとんど毎日開催されています。参加者もだいたい300人前後は集まっていますね」
平日21:00からの開催が多く、調べてみると500人を超えるような日もあるようだった。ランキング上位プレイヤーはほぼ毎日参加している、というような状況のようである。
そーすやきそば「上方修正がされる前は【火水カツマスター】を中心に、【5色ドギラゴン剣】、【ジョーカーズ】、【メタリカ】といったデッキが多かったです。いつもそうである訳ではないのですが、いまの環境についてはほぼランクマッチの環境をそのまま反映している、ってケースが多いですね。ただ『ランクマッチに専念したいから公認大会は出ない』という層も、ある程度はいます」
いわゆるランクマ専業といったプレイヤーもいるが、とはいえ公認大会に日々参加する層とは大きな乖離があるわけでなく、環境としてはそこまでランクマッチと離れていないという。
ただ、上方修正後の公認大会では、1つのデッキが目に止まったようだ。
そーすやきそば「上方修正された翌日から公認大会が再開しましたが、【火光アポロ】の使用者が大会でも増えたな、って感じでした」

実際、レートの増減があるランクマッチ以上に「【火光アポロ】で何処まで行けるか試してみよう」って取り組みは公認大会ではしやすいのかもしれない。
踏まえて結果がどうだったかというと、そこまで芳しくはなかったようだった。
そーすやきそば「【火光アポロ】はサブプランが乏しくて安定はしません。流行自体は一時的なものに留まるかなと感じています。母数的には結構いると思うんですけど、上の方では中々見ないですね。ただ【火光アポロ】は使いやすさが他の環境デッキと比べて段違いですし、手に取りやすいと思います。レアリティが高いカードも《超無限神星アポロヌス・アガペリオス》くらいしかないですからね。そういった意味だと、数が多いというのは納得です」
そーすやきそば「ただ、【火光アポロ】に負けたくないと考えているプレイヤー層は多そうで、例えば【火水カツマスター】には《爆殺!! 覇悪怒楽苦》の部分に《ドドンガ轟キャノン》を入れているケースもあります。なんなら《ドドンガ轟キャノン》自体が使われているケースが増えていて、【ヘブンズ・ゲート】に1枚入れている、なんていうリストもありましたね(笑)。《音感の精霊龍 エメラルーダ》でシールドに埋めて起動とか出来るので。それだけ【火光アポロ】が意識されている、ということだと思います」

踏まえて、グランプリの環境予想については次のように分析してくれた。
そーすやきそば「やっぱり上方修正の影響で【火光アポロ】は一定数はいると思います。ただ中心となるのは【火水カツマスター】や【メタリカ】、【ジョーカーズ】や【5色ドギラゴン剣】といったデッキだとは思っていますね」
まとめ
いかがだったろうか。
今回は3名のプレイヤーから話を聞きつつ現環境の情報について整理してきた。
とにかくデッキの数が多いという環境であり、選択する側としては難しさがあるだろう。
反面、あらゆるデッキにチャンスがある環境とも言える。
当日出場するというプレイヤーも、そうでなく配信を観るというプレイヤーも、ぜひ様々なデッキの活躍を見て、今年のグランプリも楽しんで欲しい。
協力いただいたプレイヤー
・牛乳
・丸小糸
・そーすやきそば