デュエプレグランプリ 2024
メタゲームブレイクダウン

ライター:河野 真成(神結)

2024年5月18日。
デュエプレの戦いの歴史に、新たなページが刻まれた。
史上初となる、デュエプレGPの開催である。
500名以上のプレイヤーがベルサール秋葉原へ集い、初代王者を目指して戦うこととなった。
予選は計7回戦行われ、本選進出を果たした32名のデッキは以下の通りである。

6 火自然モルトNEXT
5 自然単サソリス
4 5cMAS
4 ヘブンズ・ゲート(光単 3 光水 1)
3 闇単ヘルボロフ
3 火光侵略
2 火水UK
1 5cイメン=ブーゴ
1 トリガーロージア
1 光単ミラクルスター
1 光単ルネッサンス
1 火(闇)自然モルト王


勝ち上がったデッキの中から、ピックアップして紹介しよう。

自然単サソリス

前評判でも有力なデッキの1つとされていた《龍覇 サソリス》を軸としたデッキが、キッチリと数字上でも結果を残した。





元々は《豪勇者「猛攻の面」》を生かした、どちらかといえばミッドレンジ寄りのデッキではあったが、現在は「轟炎革命」にて新規登場した《雪精 ジャーベル》や《獣軍隊 ゴアラ》といったカードの助けもあり、より《邪帝遺跡 ボアロパゴス》の展開力を生かした構築となっている。

言ってしまえば、波状攻撃が出来るミッドレンジだ。

盤面の展開力は、《邪帝遺跡 ボアロパゴス》で折り紙付き。
トリガー等で耐えられて除去を当てられたとしても、クリーチャーたちは《豪勇者「猛攻の面」》の効果でマナに送られるため、結果的に《邪帝遺跡 ボアロパゴス》を経由して再展開が可能となっている。



これによって、継続的な打点を用意出来るというわけだ。

加えて相手の攻撃に対しては《高飛車姫プリン》という防御手段も用意しており、更にそれを乗り越えても《古龍遺跡エウル=ブッカ》が待ち構えている。

プレイヤーによっては蓋だけでなくトリガーも含めたケアとして《界王類絶対目 ワルド・ブラッキオ》を採用していることもあった。

更に《トレジャー・マップ》や《雪精 ジャーベル》といった自然特有のサーチカードのお陰で安定感も高く、大きなデッキ事故も少ない。

波状攻撃、そして安定感。
こうした要素が多くのプレイヤーの支持を得ることとなり、結果として予選突破者数の中でも大きな存在感を示した。

火自然モルトNEXT

サソリスが安定感を主張する一方で、瞬間的な爆発力に優れたデッキもキッチリと数字を残した。
ご存じ、【火自然モルトNEXT】である。





受けとなるシールド・トリガーをほぼ採用せず(トリガーが《フェアリー・ライフ》のみ)、序盤を《メンデルスゾーン》などのブーストで過ごしてターンが来るのを待ち、7マナに到達すると《超戦龍覇 モルトNEXT》や《次元龍覇 グレンモルト「覇」》といった強力なドラグナーでこじ開ける、というのが基本的な戦い方である。

特に《超戦龍覇 モルトNEXT》からの《闘将銀河城 ハートバーン》と《爆熱天守 バトライ閣》という二択は強力。
前者は予告なしの突然の敗北があり、後者は1ターン後には「ここが龍幻郷だったのか」とも思えるような盤面が形成されることだろう。

一度マウントを取るような展開になってしまえば、そうそうゲームは覆らない。
数々のドラグハートに加え《永遠のリュウセイ・カイザー》や《悠久を統べる者 フォーエバー・プリンセス》、そして《不敗のダイハード・リュウセイ》といったカードたちによって、多少のトリガーでも強引に突破することが出来る。

しかし、大会前のモルトNEXTの評判は決して高い方とは言えなかった。
実際有志の調査によれば、直前で開催されていたドギラゴンカップの最終100位でこのデッキを使用したプレイヤーというのは、決して多くなかったという。

これは《メンデルスゾーン》や《フェアリーの火の子祭》を引けていないとゲームにならなかったり、或いは先攻・後攻の影響が大きかったり、そもそも受けを主体としたデッキが多かったりと、ランクマッチという長期間に渡って安定した勝率を求める環境に於いては、あまり好まれなかったのだろう。

しかし、一発勝負の大型大会となると話は別。
優勝を目指すならば、ある程度の上振れは必要。《闘将銀河城 ハートバーン》からシャオラァ! と叫べば、受けデッキであっても貫通することもある。



……と、使用者が考えたかどうかは不明ではあるが、ポテンシャルが高いのは間違いない。流石の貫禄というべきか、予選突破者数はサソリスを並んで最多。
デュエマを代表するデッキの1つだけに、面目躍如といったところであろう。

5cM・A・S



GP前に突然台頭したのが、この【5cM・A・S】というデッキだった。





コンセプトとしては「受けを軸に試合を展開し、全対面に勝ち筋を持つ・有利を主張する」ことを目指したデッキなのではないだろうか。

5cとは言っても「最終的に5色を全部使う」といったようなデッキ構成となっている。
5cにしては珍しいくらいに単色カードの採用も多く、ブーストカードは勿論、メインカードである《龍覇 M・A・S》の他、楯埋めの出来る《プロテクション・サークル》と、それで埋める《DNA・スパーク》、ドラグハート対策圏受け札である《界王類邪龍目 ザ=デッドブラッキオ》など、役割が決まっているカードも多い。

一方で《ブレイン・ストーム》はかなりお洒落な1枚だ。
序盤で《フェアリー・ミラクル》の色調整に使ったり、終盤では《勝利宣言 鬼丸「覇」》のジャッジに《世紀末ヘヴィ・デス・メタル》を固定したりと、デッキを支える1枚だと言えるだろうか。

概念的には受けデッキだが、【トリガーロージア】のような完全に構えて待つといったデッキと比べて、比較的アクティブにゲームを進められるのも魅力である。
《世紀末ヘヴィ・デス・メタル》でのワールド・ブレイクもそうだが、《最終龍理 Q.E.D.+》などでビートするプランもあり得る。



加えてデッキの構成や受けの枚数などが読みづらいこともあり、相手からすれば初見で完璧な対応をすることも難しいというのも利点だった筈だ。
全体的に見て勝ち組デッキであったのは間違いなく、その強さは本選に入っても健在。最終的にベスト4に2人を送り込むという堂々たる結果を残した。

しかし共に準決勝で敗北し、優勝の栄誉を惜しくも手にすることは叶わなかった。

ヘブンズ・ゲート

守りの王道は、やはり強かった。





デュエル・マスターズを代表する受けトリガー《ヘブンズ・ゲート》。
そこに強力な光のドラグナーと、マナ武装のカードたちの力が加わり、見事優勝を成し遂げたのである。

もっともヘブンズ・ゲートといっても、デッキの軸はどちらかと言えば《ドラゴンズ・サイン》に寄る。5マナ目でアクションしたいからだ。
メインとなるのは、当然《真・龍覇 ヘブンズロージア》。複数のドラグハートの選択肢を持ち、それぞれ違う役割を持っている。



《天獄の正義 ヘブンズ・ヘブン》は安定の選択肢で、こちらで手札のクリーチャーを踏み倒しながら《天命讃華 ネバーラスト》への龍解を狙うというのが、一般的な戦い方だ。

一方で《真聖教会 エンドレス・ヘブン》であれば除去の多い相手に対してシールドを増やして耐えるというだけでなく、先にマウントを取って《真・天命王 ネバーエンド》のパワーで押し通す、というプランがある。特に【闇単ヘルボロフ】などにはこれを狙うことになるだろう。

また詰めの状況では、《天命王 エバーラスト》もしばしば登場する。

他、《ドラゴンズ・サイン》からの選択であれば《護英雄 シール・ド・レイユ》も出番が多い。
単純な2面除去はもちろんなのだが、その手段が楯送りということで、墓地利用するデッキや《神豚 ブータンPOP》などのドロン・ゴークリーチャーたちに強いのも嬉しいポイント。

一度展開したあとの守りはとにかく堅く、決勝でもその力を発揮。
見事なゲームメイクで、最初の栄冠に輝いたのである。

火水UKパンク

長らくND環境を支え続けてきた【火水UKパンク】。メインを担う《絶超合金 ロビンフッド》や《武闘将軍 カツキング》、《秘拳カツドン破》といったカードはもう間もなくND落ちとなる。

そんな彼らの最後の晴れ舞台として用意されたのが、このGPだった。





デッキの特徴を挙げるとすれば、「なんでも出来る」といったところだろうか。流石に神の名を冠したカードなだけはある。

基本的な戦い方について書くと、まず序盤は小型のクリーチャーや《超合金 ロビー》などで手札を整えつつ、相手の楯を減らしていく。そしてその過程で手札に溜めていた《神豚 ブータンPOP》から神の槍こと《トンギヌスの槍》を投擲して詰める、といった具合になるだろう。
エグザイル・クリーチャーの性質上、破壊系の除去に強く戦線を維持しやすいため、こうした戦い方が可能というわけである。

しかしこのデッキの“神”たる部分はそれだけに留まらない。

最初に挙げた通り、このデッキはかなり万能だ。

例えば受けでいっても《終末の時計 ザ・クロック》に《秘拳カツドン破》を用意。
特に《秘拳カツドン破》はトリガーすれば《絶超合金 ロビンフッド》や《神豚槍 ブリティッシュROCK》を繰り出し、踏ませれば勝ちの必殺級大きなトリガーとなることも多い。
そしてそうしたトリガーを《アクア・スーパーエメラル》を自ら仕込むことまで可能。

また殴っていくデッキである以上、相手のブロッカーなどは脅威ではあるのだが、そこに対しても《武闘龍 カツドン》が綺麗な解答となる。
更に最終奥義として、ヘブンズ・ゲートのブロッカーを消し飛ばすべく《熱血龍 GENJI・XXX》までもが採用されるリストも。

と、これだけでも非常に強力なデッキであったのだが、更に「轟炎革命」で《キリモミ・ヤマアラシ》を獲得したことで、いよいよ最終形態へと至った。



《超合金 ロビー》や《神豚 ブータンPOP》をスピード・アタッカーで打ち出せるようになったことで、自壊からのドロン・ゴーも狙いやすくなり、更に無警戒の《トンギヌスの槍》投擲など、一気に戦略の幅が広がったのである。

しかしその分、プレイ難度は高かった。
前評判では【ヘブンズ・ゲート】や【自然単サソリス】などと並んだ三強とも予想されていたが、予選抜け自体はやや少なめだったのも、プレイの複雑さが影響している部分もあるだろうか。

それでも本選では、デッキの威力を存分に見せ付けてくれた。準決勝で見えた《トンギヌスの槍》連射などは、まさにUKでしかなし得ない、神に近しい技だったと言える。

決勝では僅かに及ばなかったものの、見事な準優勝を達成。
自らの花道を飾ったと言えよう。

まとめ

こうして、デュエプレ初のGPは幕を閉じた。
奇しくもデュエル・マスターズの最初のGPも革命編に開催されており、カードプールとしてはかなり近いものがあった。

そうした中で、《真・龍覇 ヘブンズロージア》や《超戦龍覇 モルトNEXT》、そして《邪帝遺跡 ボアロパゴス》といったカードたちが活躍を見せたのは感慨深い。

さて、この記事が公開される頃には恐らく次の弾のカードリストも発表されている頃だろう。別れを迎えるカードもあれば、新たな出会いとなるカードも、多数あるはずだ。

デュエプレの戦いはまだまだ続く。

そして次なる戦いの舞台もきっと、訪れる日が来る筈だ。