デュエプレ開発者インタビュー
キャラクターデザイン・ストーリー担当:野島央州

聞き手:神ゲー攻略編集部



※本インタビューにはデュエル・マスターズプレイス メインストーリーEPISODE 29までの内容が含まれておりますのでご注意ください。

2024年12月に5周年を迎えたデュエル・マスターズプレイス。メインストーリーでは2025年2月に更新されたEPISODE29をもってヴィヴィ・禁断・そして世界を巡る戦いに幕を降ろした。インタビュー公開翌日には舞台を学園へと移し、新章へと再び歩み出す。

今回は「デュエプレ開発者インタビュー」第1回として、キャラクターデザイン、ストーリーの制作を担当する野島氏にデュエプレのストーリー制作、更には物語を彩る多彩なキャラクターに関する秘話を当時の開発資料もお見せいただきつつお話を伺いました。


初めてデザインしたのは守護者


―――本日はどうぞよろしくお願いいたします。早速ではありますが、どのような経緯でデュエプレに関わられたのか、お聞きできればと。

野島氏:
よろしくお願いします。タカラトミー デジタル事業室企画課の野島 央州(のじま ひろくに)と申します。タカラトミーに入社したのは5年ほど前、ちょうどデュエプレがリリースする直前ぐらいですね。その頃に入社して、それからずっとデュエプレに関わっております。

デュエプレではアートディレクターとしてキャラクター周りの設計・発注・修正、あとはシナリオも担当しております。デザインとシナリオを担当しているということもあり、社内では「IPディレクター」とも言われております。

元々別の会社で、デザイナーとして自分のチームを持ってアートディレクションをしていたのですけれど、友人の紹介もあって、デュエプレプロデューサーの佐戸と知り合いまして、『守護者のデザインを何とかしてくれ!』と相談をいただいたところから、このゲームに関わっております。

―――プロデューサーからの熱い要望もあって守護者のデザインから始められたと。5人ともストーリーの大きな軸として現在も高い人気を誇っていますが、初期のデザインで苦労された点はありましたか?

野島氏:
デザイン的な面での苦労はあまり無かったです。元々デュエマのプレイヤーという訳では無かったのですが、漫画の『デュエル・マスターズ』が好きで読んでいたということもあり、大体こういうイメージだろうっていう構想がすぐに出てきました。なので、一番苦労したのは、時間ですね…(笑)

―――確かに、デュエプレリリース直前に入って守護者のデザインを…というのはかなりギリギリな状況だったんですね。

野島氏:
その上で、既にデザインの初期案は完成していて、あとはゲームに実装するだけの状況。しかも、リリース初期に皆さんがご覧になったアニメPVの制作がもう既に進行していた状況でして…。
直すにしてもあと1カ月ぐらいしかないという状況で、守護者のデザインを完成させなければいけないというところで、ものすごく苦労しましたね。



ソーシャルゲームに落とし込む上での”ズレ”


―――まさに突貫作業のような状況で守護者のデザインを完成されたとのことなのですが、その過程において没になったデザインはあったりしたのでしょうか。

野島氏:
もちろんあります。先ほどお話しした最初期に完成していたデザインもお見せしていいと言われています。
新しく守護者をデザインするにあたって生まれたデザインも本日ご用意してきました。


野島氏:
こちらがまず一番最初、僕が入った当時に元々作られていた守護者のデザインですね。

―――多少面影はあるものの、全体的に印象がかなり違いますね。

野島氏:
そうですね。元のデザインが悪いという訳ではないんですけど、僕がこれを見た時「ソーシャルゲームの文脈からはズレたデザインになっているな」というのが第一印象でした。

―――ソーシャルゲームの文脈からズレたデザインというのは、TCGや漫画のデュエル・マスターズに引っ張られ過ぎているといったイメージでしょうか?

野島氏:
いえ、当時プロデューサーの佐戸から「キャラクターをスキンとして、ユーザーに使ってもらいたい」という想いを聞いていて、その視点で見たときに、「ちょっとこれじゃインパクトが足りないな」と感じました。

―――なるほど、むしろ原作キャラクターに負けないぐらいの特徴やインパクトを更に付与したかったと。

野島氏:
この子達のデザインは非常にシンプルです。シンプルなのが悪いというわけではありません。例えば5人が登場するのがアニメなどで、メインとして活躍するのはクリーチャーで主人公のキャラクターたちは引き立て役に…という形であれば、複雑な形状も多いクリーチャーをバックにシンプルさで際立たせるのが効果的になると思います。
しかし、ソーシャルゲームだとアニメのような見せ方にはなりません。となると、キャラクター単体でも売りになるビジュアルが必要になってくるので、初期案ではまだ足りないなと。

文明のイメージを見た目に落とし込む


野島氏:
そういった点から、昨今流行しているソーシャルゲームと見比べた時に遜色ないというところと、デュエル・マスターズの文明の要素がしっかりと性格やビジュアルに現れたところで、新しくデザインしたものがこちらですね。


野島氏:
これは僕が入ってから整えたものですね。だいぶ今とそのまんまな雰囲気の子もいると思うんですけど、グレンとか分かりやすく結構違いますね。

―――かなり方向性は現在のデザインに近くなっていますね。グレンに関しては現在のデザインよりもかなり主人公っぽい印象を受けます。

野島氏:
衣装は現在のものとほぼ同じなんですけど、やっぱり火文明と言ったら切札勝舞くんのイメージが自分の中でありまして。

勝舞くんと言ったら「熱血でかっこいい」というイメージを持っていました。火文明の「スピード」や「パワフル」といった印象も含めて「レーサー」というイメージでこのようなデザインになりました。

しかし、このデザインだと、ヒーロー感が強過ぎて、あまり火文明っぽくないよね?という話になりまして、結果として現在の少しヤンキー色の強いグレンになっていますね。

ルピコと守護者の対比から見えた課題


―――大きく印象が変わったグレンとは対象的に、ルピコはこの時点からほぼ完成されているデザインですね。

野島氏:
ルピコは自分がデュエプレに関わる前からもう既に居た子で、見た瞬間「この子がデュエプレの顔だな」と思いました。他にも、シティバトルに出てくるコタロウとかもこの時期にはできていたのですが、そういった子らの中でも最もデザインが良かったのがルピコです。
そのため、「ルピコに負けないビジュアルにしなきゃいけない」というのは、キャラクターを作る上での課題として掲げていました。
これはプロデューサーの佐戸に「デザインを改善するためにはどうすればよいのか?」という話をするときに、20pくらいの資料にまとめて説明した覚えがあります。

―――ルピコに引っ張られるような形で守護者のデザインを切り直していったと。特にどういったところでインパクトが弱いと感じられたのでしょうか?

野島氏:
ルピコと比べると、全体的にこじんまりとしてしまっています。見た目のインパクトや、その文明らしさをエフェクトの方で出していることもあり、キャラクターのデザインとして目を惹き付けられる印象が薄いんです。
実際、原作のキャラクター達と見比べた時、真っ先に目を惹くのは原作のキャラクター達の方だと思います。原作のキャラクター達はデフォルメが強いということもありますが、やはり松本しげのぶ先生のデザインはパワフルです。ルピコはそのパワフルさに並べる個性があります。

ルピコを見ると、髪の毛の影響も大きいんですけど、やはりパッと見て目を惹くし、かつ《コッコ・ルピア》の要素をしっかりと落とし込まれていて。
やっぱりこれと戦わなきゃいけない。これに勝って、更に親しみを持ってもらえるキャラクターにしないと、ユーザーに満足してもらえない。デュエル・マスターズのキャラクターとして認知してもらえないという課題を感じていました。

―――確かに初期のデザインはキャラクターよりもエフェクトに目が向かいやすい印象を受けます。文明の力を身につけているという説明であれば十分に感じるものの、キャラクター単体で見るとどうしても見劣りをしてしまうといったところでしょうか。

野島氏:
そうですね。エフェクトは飛び道具だと思っているので、それ以外の要素でパッと見てその文明らしさが伝わらないとキャラクターデザインとしては弱いかなと。
文明らしさを「キャラクター」で感じてもらうためにも、性格や衣装、構図も含めて守護者のデザインをしようと思っていました。
「エレナは光文明でガードが堅いから、初期衣装では絶対肌は出さない!」とか。

―――こういったデザインをしていきながら、デュエル・マスターズプレイスというゲーム自体により深く触れていく中で、印象の変化などはありましたか?

野島氏:
TCGのデュエル・マスターズで言うと、自分が好きだったり、漫画を読んでいたりしたのが勝舞くん編の最後の方までだったので、さっきも話した通り「熱くてカッコいい」というイメージがすごく強かったですね。

実際、このプロジェクトに入ってより原作のデュエル・マスターズを知っていった時に、勝舞くん編以降の展開が結構コミカルな方に寄っていてちょっと面食らったところはありましたね(笑)
ただ、結局のところ根本は変わっていなくて、キャラクター達のドラマは熱いし、デュエマはカッコいい。根本的には熱くてカッコイイというのは今でも変わっていないんだなと思っています。


5人の守護者を魅力的にするためのストーリー


―――デュエプレのメインストーリーについて、最初は試練の塔といったデュエマシティを中心とした物語が展開されていましたが、中盤からはクリーチャー世界がメインの舞台となり、かなりシナリオの流れが変わったように感じました。このあたり何か変化はあったのでしょうか?

野島氏:
そうですね、最初5人の守護者を一気に押し出していきたいものの、当時は「カードパックを引くとスキンが獲得できる」というシステムが存在しなかったので「手に入るスキンとしては用意されてないけど、守護者を魅力的に見せ続ける必要がある」という方針からストーリーを組み立てていました。

―――しっかりと守護者の活躍や魅力を見せてから次の展開に持っていきたかったと。ちなみに、クリーチャー世界へ舞台を移すという構想は最初から考えられていたのでしょうか?

野島氏:
元々クリーチャー世界に行くという構想はしていました。しかし、「どこにどのタイミングで向かうべきか」が大きな課題としてありました。

デュエル・マスターズという大きな作品を考えた時、1弾のストーリーから行くとなると、切札勝舞くんの時代なので、今の若い子からするとあまり知らないって方も多いと思っていました。

それもあって、メインストーリー、特に最初の方に関しては、ふんわり勝舞くんたちのストーリーを軽く踏襲しつつ作っていました。

―――ザキラという悪役の登場や、神殿編の要素など、当時を知る人には「おっ!」となるような要素が盛り込まれていましたね。

野島氏:
ですね。実はザキラが関わっているというのが途中で明らかになって、W(ホワイト)っていうキャラクター出てきて…という流れで、本当にふんわりと漫画『デュエル・マスターズ FE』あたりまでのストーリーを踏襲して、その中でオリジナルキャラクターを見せていく、という展開にしていました。

―――こういったいわゆる「プロット」のような点について、初期段階でどのあたりまで考えられていたのでしょうか?

野島氏:
それこそ原作キャラクターがどんな顛末を辿るのかについては最初から構想にありました。やはりデュエル・マスターズというIPをお借りする関係上、原作キャラクターが何故この世界に来て、どうやって帰っていくのか、というのは一番最初に考えていました。

その上で、オリジナルキャラクターやクリーチャー達がどう関わっていくのか?というのはカード開発にも影響されてしまうので、ふんわりとだけ考えていました。

―――ストーリーに登場するキャラクターは、新しいパックやスキンの実装に合わせて都度構成を組み替えていかれたと。

野島氏:
基本的にはそうですね。その中でもお話を作る中で、このクリーチャーとかこういうキャラクターが居ないと話が回らないとか進められないというところに関してはプロット段階である程度決めておいて、それで進めていく中だったり、カード開発に合わせてクリーチャーやキャラクターを入れたりしていく感じですね。

制約の多い中でのストーリー制作


―――キャラクターの選定以外にも、デュエプレのストーリーは必ず間に対戦パートが挟まっていたり、原作のストーリーに沿わせて、イメージを崩さないようにしたり…など、かなり制約が大きい制作だと感じます。この制約の中でストーリーを作る上で、特に難しかったところはどこだったのでしょうか。

野島氏:
勝太編に入るタイミングが一番難しいなと感じましたね。

当然ですけど、原作キャラクターも出して欲しいという要望は常にあり、勝太くんという新しい時代に入っていく中で、勝太くんの時代がギャグ強めなストーリーなんですね。

また、デュエプレをここまで運営してきて、ユーザーがコミカルな内容よりもシリアスなストーリーを求めているんだなというのは感じていたので、シリアスに転向しようとしたところだったんです。でもそこで勝太くんが来ちゃうという…。

それに勝太くんって「成長していく」キャラクターでもあるので、その成長という要素をメインストーリーに取り入れてしまうと、「それでは次は5年後・10年後のお話です!」みたいに、勝太くんの成長に合わせて周りの時間もあわせなきゃいけなくなってしまいます。そこの整合性はどうしても破綻が出てしまうことはありましたね。

原作キャラクターを大切に扱えば扱うほど、オリジナルキャラクターが整合の取れない動きをしないといけなくなるし、当然その逆もあって、オリジナルキャラクターを押し過ぎると原作キャラクターが変な行動しちゃったり。「この子はこんなことしないのに」みたいなことをやらなきゃいけなくなるところが、すごく苦労した部分ですね。
これが自分だけでシナリオを書いているならまだいいのですが、シナリオライターさん達にも書いていただいている訳で…。このコントロールは非常に難しいです。

デュエマの世界、本家のクリーチャー世界(超獣世界)とも違う世界でデュエプレのストーリーは展開されています。どうしても本家の子たちとは変わってしまうところがあるんですけど、そこをどうやって受け入れてもらうかというのは常に頭にある課題ですね。

―――例えばベートーベン=修羅丸という事実にプリンプリンだけが気づくといった原作踏襲も散りばめつつ、コミカル要素の強い勝太くんも参加させた上で破綻なくシリアスなバトル展開へ落とし込んでいましたね。

野島氏:
EPISODE17以降は、ほぼ自分がプロットを作ってシナリオもかなり書き直して…という体制になっていました。多分シナリオを読んでくれている方はなんとなくこの辺から「変わったな」と思ってくれていると思います。
こうなったのも、デュエマ本家の背景ストーリーを下敷きにしすぎると、ものすごくキャラクターの数が増えてしまうからです。例えばTCGのエピソード2期だと、鬼丸の成長の為に大量のキャラクターを用意しなくてはいけなくなります。
更には本家デュエル・マスターズに影響が出てしまって出来ないという都合もありまして…。

原作の要素をもっと踏襲して欲しいというユーザーの声があるのは分かってはいるものの、やっぱりアニメ・漫画・背景ストーリーだからこそできることと、ほぼ台詞主体で表現していくデュエプレの差は非常に大きい。
原作とは違った媒体でカードゲームの面白さを出す、というのは原理的に難しいんです。

例えば、デュエマはカードで闘うシーンが一番手に汗握るシーンだと思います。カードで闘う時にドラマが動く。
しかし、それはアニメや漫画だからこそ映えるものなんです。「次あのカードを引かないと負ける!」みたいなハラハラ感はデュエプレのストーリーでは出せません。

それをやるには、今バトルゾーンにどんなクリーチャーが出ていて…みたいな説明を文字でする必要があり、画面にその状況を映さなきゃいけなくなります。絵的にも原作ほどの迫力が出なかったり。

そしてバトルが終わると、バトルが終わった前提でシナリオが展開されていきます。醍醐味である「闘いの最中の友情のぶつけ合い・敵とのせめぎ合い」を見ることができません。見せられても、「さっき余裕でデュエマで勝ったけど?」となり、キャラクター達とユーザーの心理の乖離が起きます。
アニメや漫画のような、デュエマらしいテンポの良さや勢いで見せることがデュエプレのシナリオではできないんです。

それもあって、ユーザーがゲームとして行うデュエマは割り切って分けて、キャラクターが体験することに共感してもらいつつ、時折リンクする体験になるようにリアルファイト路線にしていますね。
皆さんに楽しんでもらうためデュエプレという媒体ならではの攻め方というのは常に模索しています。

このあたりの勘所が外からだと見えにくいので、自分が主導して手を入れながら、気をつけてやっている部分です。

ユーザーの心を惹くために


―――そんなクリーチャー世界を舞台としたストーリーがEPISODE16から始まっていきました。

野島氏:
そうですね。ダピコが出て、じゃあ次どうしようかってなった時に、もうクリーチャー世界入っていいだろうってなりまして。それじゃ入った時に何しよう、入るタイミングっていつだろうと考えた時に、ちょうど「ゼニス」が出てくるタイミングだったので、じゃあもうここだ!ということで気合い入れて作りました。

ちょうどそのあたりから、自分がほぼ全部書き直すみたいなことをやり始めました(笑)

―――全部ですか!?デザインでも手直しされていると話されていましたがこちらも書き直しを…。

野島氏:
やっぱりもう結構気合い入れてユーザーの心を惹き続けなきゃいけないな、というタイミングだったので、しっかりクオリティーも上げていこうと企画をしたのがそのタイミングでした。

最初の方は有名な作家さんを起用していましたし、元々のクオリティーが低かったという訳ではないです。ただ、有名な作家さんだとデュエプレの運営に合わせた稼働というのが難しく……。このままだとユーザーが求めるクオリティーでの制作はできないなという課題がありました。

本家デュエル・マスターズにはかっこいいクリーチャーが一杯いるんだから、そのかっこいいクリーチャー達とのかっこいい物語を語ることが、カードを魅力的に感じてもらうことに繋がるはずなんです。
しかし、デュエプレのカード開発はギリギリまで調整が入ります。そこに足並みを揃えて動くというのが作家さんでは難しく、自分で書くスタイルにシフトしていきました。


無垢の守護者カノン


※EPISODE17 「破壊と救済の使徒」第4話 ゼニスの使者より


―――クリーチャー世界に入ったEPISODE16からは新たなオリジナルキャラクター「カノン」が登場しました。カノンは最初、五文明の守護者を実装する段階から構想は立てられていたのでしょうか?

野島氏:
いや、実は無くてですね…。

お恥ずかしながら自分が知っているデュエル・マスターズの世代が勝舞くんまでだったので、ゼロ文明というものがあるってことすら知らなかったんです。
最初はむしろ「多色の守護者を出した方がいいんじゃないか」みたいな話がチーム内であったぐらいで。

時代が勝太くん編になって、「そろそろ増やしたいよね」「今ならゼロ文明の子だよね」「じゃあこういう子はどうか?」と企画したのがカノンですね。

―――デザインに関しても野島氏が企画されたのでしょうか?

野島氏:
はい。こちらはラフ案をいくつか用意してきました。


野島氏:
一番最初に担当から上がってきたのが左上(「元」と書かれているもの)ですね。

―――カノンをデザインするうえで重要視していた点を教えてください。

野島氏:
大きい方針は変わっていないのですが、「ゼニス」という宗教色が強い…と言うと少し変なんですけど。ゼニスは、エピソード3期あたりから神として、神話として残っているような種族だったので、そんな存在に仕えるとなると、巫女っぽいデザインが良いよね、という話からスタートしました。

しかし、最初のデザインだとあんまり巫女っぽくないなと感じまして。

―――どちらかと言うと魔法少女のような印象を受けます。

野島氏:
そうですね。魔法少女もコンセプトとして欲しかった部分はあったのですけど、少し方向性が違うなということで、色々パターンを出して探っていました。

色々パターンを出して見ていく中で、ゼニスのクリーチャーデザインを見てもらうとわかるのですが、無色のクリーチャーは黒が結構多い子もいるし、白が多い子もいる。その中にワンポイントで虹色は入っていたりするので、白と黒の塩梅はかなり悩んだポイントですね。

―――中には黒を増やしたバージョンが。

野島氏:
ソックスからタイツに変えて黒の面積を多くしたのが黒増やしver(上段の右から1つ目と2つ目)ですね。ただ左のものだと、ちょっと黒が多すぎてあまりゼロ文明っぽく無くなってしまったかなといった話になりまして。

―――ほぼ全身黒になってしまうと闇文明に近くなってしまっているように感じます。

野島氏:
そうですね、どうしても無色=無彩色というところを表現していこうとすると闇文明っぽくなってしまったり、逆に光文明っぽくなってしまったりして。
その上で「かわいさをもっと盛り込みたい」と思いながらデザインをいじって、今の形になっていった感じですね。

―――下段のデザインでは特に髪型のバリエーションが非常に多いですが、今のデザイン(⑤)に決めた理由は何でしょうか?

野島氏:
正統派が良かったんですよね。一般的な作品だと正統派と呼ばれるような子がいると思うのですが、デュエマには…なんというか、僕のイメージする正統派が意外と居なくて…(笑)

その正統派のラインはどこだろうと探していて、下段の①から④は、正統派っぽくはあるものの若干変化球の正統派で、あまり王道感が無いなと。

それじゃあもうちょっと王道感を出していこうか、となった時に、大きいリボンを付けて髪が長くて…という流れでできたのが⑤のデザインですね。そんな凝ったことはしてないんですけど、五文明の守護者が結構味付け濃いめのデザインだったので、反対にシンプルな正統派が良いかなと。

―――王道、正統派として生まれた無垢の守護者カノンですが、ストーリー的な面で見るとEPISODE29まで進んだ現在でも、例えばゲートを開く力など、まだまだ謎の多いキャラクターかと思います。こういったカノンの背景に関しての掘り下げは今後あるのでしょうか?

野島氏:
もう明確に設定はあって、実はそれに若干触れる内容自体はイベントのシナリオであったりするんです。が、それもほとんど情報を伏せる形でシナリオ化することになりました。

というのも、カノンは重要なクリーチャーと関わっていまして…。最初にそのシナリオを原作の背景ストーリーに関わっている方に見てもらったら「ちょっと今は触れないで!」って言われてしまいまして、そのうち触れられるタイミングがあるかもしれないですが、直近は難しいかもしれないですね。

ただ、完全に出さないというのも変だと思っているので、ものすごく間接的に表現したりすることはあるかもしれないです。

デュエプレで擬人化されたクリーチャーたち


※EPISODE17 「破壊と救済の使徒」第4話 ゼニスの使者より


―――クリーチャーをストーリーに登場させる上でウェディングやQ.E.D. 守護者の切り札といった、キーパーソンとなるクリーチャーは擬人化して登場することがありますが、こういった擬人化キャラクターの選定基準はあるのでしょうか?

野島氏:
場合によったりするので一概には言えないんですけど、原則としてはあまり原作上でフィーチャーされていなかった、手を付けられていなかったクリーチャーを選ぶというところはあります。

擬人化キャラクターでいくと、ウェディングをデザインすることになった経緯が分かりやすいですね。最初、ウェディングは擬人化の予定が無かったんです。しかし、途中から無色・ゼロ文明と呼ばれる新たな文明が出るにあたって、新しい守護者を登場させる必要が出てきました。

ただ、途中からいきなり完全な人間のオリジナルキャラクターが出るとなると、ユーザーもどこから取っ付けば良いか分からないと感じる人もいるだろうと。そうなった時に、相棒となるクリーチャーが必要だというお話をさせていただいて。

その中で、あまり原作側で手をつけられていない、ゼロ文明のクリーチャーでどれが良いだろう?というところで、《「祝」の頂 ウェディング》の擬人化に至りました。

原作の「Wizards of the Coast」さんや「小学館」さん、「ワールド・ハイビジョン・チャンネル」さんと相談をしつつ、このあたりのクリーチャーだったら良いよとお話をいただいて、本家デュエル・マスターズの今後の展開と整合性を上手く取りつつ、カード開発チームと相談しながら決めていく、という形ですね。

―――そんなウェディングや、Q.E.D.といったデュエプレオリジナルの擬人化クリーチャーは、デュエプレフェスで守護者と共に新規描き下ろしされるほどユーザーからの人気も高いキャラクターに感じていますが、現在の高い反響は予想されていたのでしょうか?

野島氏:
「予想した」というか「狙った」ので、その狙い通り、ユーザーがしっかり反応をしてくれているなと思っています。
実際SNSの反応を見ても、このあたりのシナリオから自分で書き直したということもあって、明確に反応が変わったなと感じています。

自分はシナリオ書きという訳では無いので、文章に拙い部分はあると思うんですけど、それでもユーザーに狙ったものがしっかり伝わって、かつ受け入れて下さっていて、根本はデュエル・マスターズの「熱い!かっこいい!」というのを伝えたくて作っている部分が強いので、喜んでもらえて安心しました。

―――シナリオとしてもキャラクターデザインとしても好評な2人ですが、こういった擬人化キャラクターのデザインに関して特に気にされているポイントなどあるのでしょうか?

野島氏:
ウェディングとQ.E.D.の一番最初に上がってきたラフ画を持ってきているので、そちらを見ていただきつつお話させていただければと。


―――ウェディングに関してはほぼ現在のデザインそのままですが、盾と比べて小さめ…ですかね。

野島氏:
そうですね、結構幼くなっちゃっています。カノンと並ぶことを想定した時に、二人とも幼い印象だとちょっとバランスが悪いなと思い、「もっと背を高く、もっとクールで格好良く」を意識して直してもらいましたね。
感情のない神様で、人間にとって善良な存在ではありません。無表情、冷酷、といった雰囲気に見えるようにしてもらいました。

―――カノンとウェディングの身長差はどのくらい欲しいと思っていましたか?

野島氏:
ゼニスは邪神のように讃えられているという設定もある種族だったりします。カノンはその邪神のような存在に仕える女の子ってこともあって、やっぱり仕える対象はデカい方がいいなと最初から思っていました(笑)
なので、かなり身長差があるようにしていますね。


―――実際、イベントのパネルやキービジュアルでもかなりの身長差を意識して作られていますね。

野島氏:
イベントのパネルだと限界があって、その大きさを完璧に表現というのはできないんですけど…(笑) かなり意図してデカくしています。が、実際はあれよりもっとデカいと思います。身長で言うとだいたい2m30cmから2m50cmぐらいを想定しています。

もっとデカくすることも可能なんですが、あまりデカくしちゃうと今度はゲーム画面に収まらなくなってしまうので、現実的に実現可能な範囲かつ明確にデカい!ってなるサイズを狙いました。


―――続きましてQ.E.D.ですね。

野島氏:
Q.E.D.はものすごく苦労しました…。

最初「ドラゴンの擬人化」と伝えていたのですが、上がってきたのがこちらのラフでして。あまりドラゴンっぽくないものになってしまっていたので、まずそこで苦労しました…。

やっぱりQ.E.D.って水文明のドラゴン、しかも龍素王という名前が指す通り、王様なんです。それを考えた時に、王様感が全然無いと思って。「もっと王様感かつドラゴン感のある派手な見た目になって欲しい」と意識して直してもらい、今のQ.E.D.になりました。

※EPISODE21 「結末の先へ」第8話 交渉決裂より


―――今のデザインと比べると少女感が強い印象を受けますね。

野島氏:
作家さんがムラのある方でして、良いときは1発で「これだ!」っていうのが上がってくるのですけど、忙しい時期だと手癖があるのか、結構幼くなってしまいがちなんです。なのでそこを手直しさせていただいていますね。

―――現在のQ.E.D.は、かなり特徴的なデザインですが、手直しをする上で特に意識して依頼したポイントを教えてください。

野島氏:
お願いしたというか、自分で直しちゃったんですが…(笑)

デザインを作るに当たって、水文明ってすごく頭が良いっていう文明でもあって。その水文明の王様で、めちゃくちゃデカくて、長く生きているドラゴンってなると、もう本当にやることなすこと「失敗もしない完璧超人」になっちゃうんです。

それこそ計算で未来も読めちゃうかもしれなくて、物語でそのまま登場すると名探偵のようにすべて解決してしまう……。「全部Q.E.D.でいいよね!」みたいな感じになっちゃうと、ちょっとそれはまずい (笑)

―――笑。

野島氏:
頭が良すぎて、下手をすれば人間との会話すら成立しません。何でも先回りして解答することになるので、会話にすらならないかも。そんな存在に感情移入はできませんよね。そうなった時に、目線を人間に合わせる必要がありました。
その立て付けを「人間体になったら性能が落ちる」という形で落とし込んでいきました。

彼女が直面する脅威というのは、本当に脅威中の脅威で単純な計算だけでは上手くいかないっていうところで表現しながら、人間と関わる時には人間と話せるようにスペックを落としているからちょっとズレている愛らしさもあったりだとか。

ただ、やっぱり元が本当に超頭の良い超強いドラゴンなので、「自信満々な策略家」を軸に作っていきました。

ヴィヴィとギュウジン丸


※EPISODE27 「その世界の結末」第9話 伝説の正体より


―――革命、革命ファイナル編のストーリーでは擬人化クリーチャーとして《禁断機関 VV-8》の力を持つ「ヴィヴィ」、そして黒幕である《伝説の正体 ギュウジン丸》が登場しました。特に《禁断機関 VV-8》は原作だと最終兵器といった感じでしたが、こちらもウェディングと同じく原作側で手をつけられていないクリーチャーという点から擬人化の企画を考えられたのでしょうか?

野島氏:
そうですね。プロットに着手するにあたって背景ストーリーを読んだ際、自分が重要だと感じたのは「ミラダンテ」と「VV-8」でして、実は最初提案していたのはミラダンテとVV-8を両方擬人化するというものでした。

ただ、ミラダンテは、原作でかなり活躍しているということもあって。じゃあ、もうVV-8を中心でやるしかないって感じで構想を立てていきました。

後は、大事なのは敵ですね。ギュウジン丸も背景ストーリーで大事だなと思っていて。背景ストーリーだとあっさりやられてしまうんですけど、侵略者のボスみたいなすごく重要な動きをしていたので、ギュウジン丸をボスに置いて、一番のキーパーソンがVV-8で…といった感じで組み立てていましたね。

―――ギュウジン丸は、禁断によって死に至る未来を変えるという目的でVV-8との関係性が生まれていましたが、結果的な行動としては世界を壊す方向に進んでしまった。

野島氏:
作中でも明言はしていたものの、あまり表現できなかった部分で、ギュウジン丸自体が禁断というものの狂気に蝕まれているというところがあります。本当ならあんなことをしても、別に天才として世界をコントロールする、なんてことにはならないんですよね。

結果的にああいう手段しか取れなくなってしまっているというのが、彼の禁断に影響された部分だと思ってシナリオを書いていましたね。

―――ストーリー終盤では全てに怯えたギュウジン丸が出てきましたが、このギュウジン丸が根底に存在する本性だったりするのでしょうか?

野島氏:
ですね。本当に禁断というものを怖がっている。恐れ慄いているというのが本来の姿なのだと考えています。あくまでデュエプレ時空のギュウジン丸は、ですけれど。

―――ギュウジン丸が禁断を克服する過程で作られたヴィヴィ。ヴィヴィはギュウジン丸のことをお父さんと呼んでいましたが、ギュウジン丸としてはヴィヴィのことを娘として、愛着を持って見ていたところはあったのでしょうか?

野島氏:
うーん、愛着はあったかもしれないですね。元々あったものを作り直しているということもあり、研究成果や追い求めていた禁断の化身として。ただ、子どもとは実は認識してないんだろうなと思っています。コントロールしやすいから親のような動きをしていたという側面が強いと思います。

S級侵略者トリオ


※EPISODE26 「制するべきもの」第10話 Final Lapより


―――ヴィヴィとギュウジン丸のストーリーの中で重要な役割を担っていたのがS級侵略者トリオ《S級原始 サンマッド》《S級不死 デッドゾーン》《S級宇宙 アダムスキー》の3人かと思います。この3人を活躍させようと考えたきっかけはどこからだったのでしょうか?

野島氏:
背景ストーリーだとレッドゾーンはどんどん禁断と化していき、背景ストーリーを漫画にした作品でもレッドゾーンは非常に重要な存在として扱われています。
デュエプレでレッドゾーンを…となると、やはりバサラの相棒ということもあるのであまり触れられないなという話になりまして。

それならデッドゾーンの方にフォーカスして、バサラの使うレッドゾーンとは別の存在にしようと。
が、残りのS級侵略者2人に関しては、実は構想段階では決まっていませんでした。

というのも自分がカードをあまり知らないってこともあって、このS級侵略者たちが特殊な立ち位置にいることを知らなかったんです。本家では後々この3人が合体したりするんですけど。

そういった背景をカード開発チームに聞いて、かつ「アダムスキーを女の子にして欲しい」みたいな要望もあったりして。じゃあということでアダムスキーとサンマッドのデザインに着手しました。

そして最後、3人とも美少女だと…というのもあって、サンマッドはむさくるしい感じにしようって話になりまして、現在のデザインになりました(笑)

―――《S級宇宙 アダムスキー》を擬人化するあたり、どういったところからそのデザインを決めていったのでしょうか?

野島氏:
カードの能力の部分ですね。ちょっと特殊なカードということもあって、自分も初めてこのカードを見た時に理解し切れなくて、「どういうことだ」と思っていました(笑)

「無重力勝利」という特殊なワードだとか、あとは侵略の仕方も、他の侵略者とは違う特殊なやり方だったりして。「UFO」とか「宇宙人」をテーマに作られたカードだなと、すごく読み取れたので、「宇宙服を着た不思議ちゃん」という構想が最初にありましたね。

実はこのアダムスキーに関しては作家さんが1発で良いのを描き上げてくれたので、その分、シナリオでの能力の落とし込みやキャラクターの設定は僕の方で頑張りました。

デュエマシティの日常


※デュエマシティの日常第119話「私は一体何を…!?」より


―――S級侵略者やQ.E.D.、ウェディングを始めとしたキャラクター達の印象付けというところで、公式Xで展開されている4コマ漫画『デュエマシティの日常』が大きいのかなと感じています。こちらはどのあたりまでご監修されているのでしょうか?

野島氏:
実は口を出していたのは一番最初だけなんですよ。

―――えっ!?

野島氏:
anekoさんが描き始められたのが、7話ぐらいからで。ちょっといろいろあってなかなか更新できなかった時期があったんですけど、運営初期からanekoさんの存在はチーム一同知っていて、anekoさんがご自身で4コマを描き始めたということもあって、じゃあ公式で描いてもらおうよってところから、anekoさんに任せることになりました。

最初のチュートリアル的な要素が強いところまでは、自分が結構要望を出して「こんな感じでやってほしい」と伝えていたんですけど、そこから先はもうはanekoさんのセンス100%でやってもらっています。

―――最近公開されていたQ.E.D.がデュエマシティから帰って、元の姿になってウワーッってなっているのとかも全てanekoさんのセンスで描かれていると。

野島氏:
ほぼ原液100%。ですね(笑)

もちろん事前に監修という意味での確認はしていますが、よほどNGなことがない限り、口出しは極力しないようにしていますね。

すごく誇張が上手い方ですし、本人もデュエル・マスターズを知っているという事もあり、あまりカード知らない自分から口出ししてしまうと、それを崩すことにもなるかなというのもあって、かなり自由にやってもらっていますね。

EPISODE29の演出


※EPISODE29 「希望を結んだ星」第10話 守護者より


―――EPISODE 29では守護者の切り札の後ろ姿や笑顔のヴィヴィなど、これまでとは異なりストーリー専用のイラストスチルが挿入されていましたね。

野島氏:
やっぱり、最後に登場するヴィヴィがしっかり人気にならなきゃいけないと思っていましたし、ストーリーを作っている時って当然ですけど、反響がまだ見えないという状況なんです。

その中で、しっかりユーザーに刺さらなきゃいけないと考えた時に、ああいうことをしないといけないな、という考えがありました。
ちょっと恥ずかしいですが、実は自分が一から十まで描いて実装されたイラストは、あれがデュエプレでは初かも知れないです(笑)

―――渾身のEPISODE29、リリース後にはXのトレンドに上がるぐらいの反響がありましたね。

野島氏:
全部あそこに持っていくって気合を入れて作っていたので(笑)

バサラの扱いなんかも最初はすごく難しかったんですけど、とはいえバサラのエピソードを盛り込みつつ禁断を扱って、禁断によってみんなおかしくなっていく、というのを描くにはアレしかなかったと思っています。

禁断の恐ろしさを表現するにあたり、どれだけキャラクター達が大変な目にあっているのかというのをユーザーの皆さんに共感してもらわなくてはいけません。
キャラクターの心情とユーザーの心情をできるだけ近づけるために、どんどん恐ろしいことが起こっていくということをユーザーに体感してもらいながら、その大変なことに巻き込まれるキャラクターたちの心情をしっかり描くことにはかなり気をつけていました。

最後はああいった展開になって、まぁ…みんな好きだと思うんですよね、ああいう展開(笑)

ああいったみんなが大好きな流行り・定番の展開みたいなものはあると思っています。本家だとちょっといろんな都合があってできないかもしれないことを、「デュエプレでならこういうことができる」というのを、ユーザーに体験してもらいたかったんです。それがしっかりユーザーに伝わり、喜んでもらえて良かったです。

規模の大きいシナリオを書き終えて



―――野島氏が大きな書き直しをし始めてから約1年半。先日公開されたEPISODE29で一旦ストーリーの区切りがつきました。ここまで書き終わった時の率直な感想はいかがでしたか?

野島氏:
絶対に面白いと思ってもらえるという確信があったので、そこは心配していなくて。ひたすら疲れたな、と感じました。次の新章を仕込まなきゃいけなかったので、むしろそっちの方が負担としては大きかったかなと思っていますね(笑)

―――世界、そして全ての時間を巻き込んだ非常に規模の大きいお話になりましたね。

野島氏:
そうですね、話の規模は大きくなったんですけど、あれぐらいやったからこそ、また幅を出せるというのもあったりします。

デュエマ自体もいろんなパラレルワールドがあるし、いろんな側面のある切り取り方ができる世界観になっています。あのぐらいしないと逆にデュエマのそういった新しい側面、「デュエル・マスターズ」らしさを感じてもらえないだろうなっていうのは思っていて。

規模の大きいシナリオって元々勝舞くん編だと結構やっているような部分もあって、アダム(漫画『デュエル・マスターズSX』におけるラスボス)というキャラクターが出てきて世界の命運を決する戦いが始まる…のような。
勝太くん編でもそうですね、ドルマゲドンXがいて、バサラと地球を賭けた戦いをするといった、世界規模の、惑星規模の戦いをするというのもデュエル・マスターズの醍醐味だと思っています。デュエプレならではの大規模な戦いのお話の中で、その醍醐味を感じていただけていたら嬉しく思います。

学園を舞台に展開される新章



―――先日行われたデュエプレフェスでは、「新章開幕」のムービーが公開され、次なる舞台が学園だと発表されました。新しい舞台として学園を選んだ背景や意図はどういったものなのでしょうか?

野島氏:
デュエプレは、先程もお話した通り、本家とはちょっと違うことをやらなきゃいけない。本家を踏襲しすぎると、本家の邪魔になってしまうという都合が前提としてあります。

特にこの新章から切札勝(ジョー)くんが深く関わってくる。もちろんジョーくんだけじゃなくて、原作キャラクター達みんなが関わってくるっていうストーリーの中で、どこにフォーカスすればいいのかを考えながら原作を読んだ時、超天篇くらいまでの中で『魔導具』が深く関わっていて。

じゃあ『魔導具』というものを語る上での舞台ってどこが良いのだろうと見渡した時、ちょうどホウエイルという魔法学校がある。しかも、原作ではあんまり語られていないというのもあり、じゃあもうこれを使うしかないなと思いましたね。

ただ、本家の邪魔になってはいけないって制約がすごく強くあるので、デュエプレでやっていることが本家の設定とは限らないというか。むしろ、全然違うと思っていただきたいのですけど。

話を戻すと、学園モノってやっぱりみんな好きで、絶対通ってくる舞台だと思うんです。色んな作品で日常的に見るものですし、本家デュエル・マスターズでもやっています。そんな王道な舞台をデュエプレではまだやっていませんでした。デュエプレのクリーチャー世界での学園モノってどうなるだろう、というところが期待していただきたいポイントです。

学園というフォーマット自体優れていますし、その上でオリジナルキャラクターだったり、原作キャラクターだったり、クリーチャーを語るっていうのは、みんな見たいところかなと思っています。

―――学園という新しい舞台でストーリーを進めるにあたり、守護者やルピコ、ダピコなどのこれまでに出てきたオリジナルキャラクター、そして原作キャラクターやクリーチャーもお話に登場するのでしょうか?

野島氏:
はい、登場する予定です。どういう形で…というのは、まだ明確に決まりきっていないところはありますし、全員登場させるとは言えませんが、何かしらの形で登場したり、関わったりする予定です。

新キャラクターノインとレヴィ



―――「新章開幕」の情報公開と同時に、新たなキャラクター「ノイン」と「レヴィ」が発表されました。2人のキャラクター性やデザインを考えるにあたり意識された点はいかがでしょうか。

野島氏:
ノインは、当時デュエマを遊んでいた方や新章デュエル・マスターズ以降のお話を知っている方からすると、手に持っている本とかでまあ言わずもがな、まさにそうですといった感じです…(笑)

新章デュエル・マスターズで登場する闇文明を扱うにあたり、魔法学校という舞台でもあるので、魔女っぽい印象にはしたいと考えていました。

しかし、完全に魔女にしてしまうと学生感が無くなってしまうので、魔女の帽子のつばを模した肩の装飾だったり、どことなく魔女っぽさを感じられるようなビジュアルにしました。

―――カラーリングに関しては同じく闇文明をモチーフにした守護者のルカとは異なり、黒を全面に押し出しているように感じます。

野島氏:
闇文明で真っ黒な子というのが今まで居なかったこともあり、そのルカとの差別化も考えて、こういうビジュアルにしています。

―――今回はノインのラフ画をご用意いただいているとのことですが、こちらお見せいただいてもよろしいでしょうか。


野島氏:
元々要望していたのが、新章デュエル・マスターズからの闇文明のカードを使う子で、魔法使いというお題もありつつ、上がってきたのがこの結構派手めで毒々しい感じのイメージですね。

デュエプレでは紫も闇文明としてのイメージが付いている部分が大きいので、紫を作家さんの方で出しすぎちゃったかなというところもありまして。

後はウェディングのときも似たような事があったんですけど、多分作家さんの癖が出て少し幼くなり過ぎてしまっていたように感じたので、ルカとの差別化も考えながら、じゃあもう思い切って黒一辺倒にすることで特別な存在感を感じられるデザインラインにしようと。

なので、最初に結構派手めなデザイン上がってきたからこそ、今皆さんにお見せしているようなデザインに変えてみようと思いました。

―――最初のデザインと比べてかなり大人しいというか物静かな印象に変わりましたね。

―――そしてもう一人、男性キャラクターのレヴィが登場します。

野島氏:
レヴィは企画した当初、どういうカードを使うか自体はまだふんわりしていたのですけど、キャラクターとしては王道を狙って作っていますね。王道の主人公のようなイメージです。

そこから設定を固めていくうちにレヴィが扱う文明が決まっていきました。それもあって文明に偏りすぎていないデザインになりましたね。

―――2人の衣装デザインに関しては、どちらかと言うと制服っぽさが薄いように感じます。

野島氏:
そのあたりはルピコの存在が大きかったというのもあるんですよね。もともとルピコが制服っぽいデザインなので、しっかりやると、新鮮味が無くなってしまったり・・・。クリーチャーも居る学校ですし、魔法学校という舞台でもあるし、結構自由な制服に舵を切っているところがあります。

なので、これから出てくる新しいキャラクターたちも自由な着こなしをしていると思います(笑)

―――EPISODE30以降はこの2人が主人公たちと力を合わせながら進んでいく流れになるのでしょうか?

野島氏:
ノインはかなり特殊な形で登場すると思います。新章デュエル・マスターズの世界において、闇文明は特殊な立ち位置にいるという側面があります。

それもあって、既にシティバトルのイベントでも、ちょっと一風変わった登場の仕方だったと思うんですけど、「へぇ、そうなるんだ」と感じる展開になっていると思います。

逆にレヴィは魔法学校、ホウエイルの学生を代表する存在として出てくるので、主人公たち、ルピコたちに積極的に関わっていくキャラクターになります。

―――PVに少し出ていましたが、新章のストーリーではノインやレヴィ以外にも新しいオリジナルキャラクターや擬人化キャラクターがどんどん出てくるのでしょうか?

野島氏:
はい、その予定です。もちろんデュエプレオリジナルのキャラクターだけではなくて、原作のキャラクターも登場することもあると思っています。

これから先の展開について



―――ちょうどこのインタビューが上がるタイミングはEPISODE30がリリースされる直前かと思います。ストーリーのあらすじや、どういった展開をするのかお話できる範囲でお聞かせいただけますでしょうか。

野島氏:
皆さん不安がられていると思うんですけど、EPISODE30は基本EPISODE29から地続きになっているお話です。ギュウジン丸の影響でおかしくなってしまった、どこか変わってしまった世界の中で、いろんな困難に遭遇していく話になっていきます。

ギュウジン丸が起こした事件というのはデュエマシティだけでは収まらず、デュエマシティから派生する世界や、全く異なる世界にも影響を与えてしまった大きな事件です。次に向かうことになる世界も、その影響からは逃れられません。

その中の一つが新章のEPISODE30で登場する舞台なんですけど、皆さんが驚くような、アクロバティックなことをしていくと思います。

その上で、ホウエイルと呼ばれる魔法学校に触れることになり、デュエル・マスターズを遊んでいる人も知らないような展開に巻き込まれていきます。

あまり深くは語れないですが、その中で、ノインも大事になってくるし、レヴィも、PVに映っているキャラクター達もすごく重要な人物として登場していくので、そこにはぜひ期待していただけたらなと思っています。

―――EPISODE30以降の新たなストーリー展開に関して、皆さんに期待してほしいポイントや、注目して欲しいポイントはどこでしょうか?

野島氏:
やっぱりユーザーの皆さんが期待されているのは、原作の要素、既にあるものをどう取り込んでいくかだと思っています。しかし、デュエプレというもの自体の成り立ちが、本家のデュエル・マスターズとは違う方向から成り立っていて、ここまでで語ったように制約が多いのも事実です。

そんな中でも、ストーリーやキャラクターなどで「デュエプレらしさ」というのをすごく押し出しながら、今後も長く運営を続けるために新たなチャレンジも多くしていくことになります。

まだ語れることは少ないのですが、ここから展開していくお話にはもちろん新しいキャラクター達も登場します。既に登場しているキャラクターもそうだしカードもそうだとは思うのですが、キャラクターたちが今後どんどん増えていく中で、それをどういう風にデュエプレ流に料理していくかというところは楽しみにしていただければと思います。

ユーザーへ向けて


―――それでは改めて、ユーザーの皆さんへメッセージをお願いいたします。

野島氏:
今後も、デュエル・マスターズの世界観を考慮しながら、いいお話を作ることも、いいキャラクターを作ることも、これからもしっかりやっていくつもりです。今後切札ジョーくん編が来るということもあり、「守護者や既存キャラクターがリストラされるんじゃないか?」みたいに不安になっている方も居ると思うのですが、全然そんな予定はないです!

イベントでこれまでやってきたような変なことも起こるし、そこに既存のキャラクターが出てきたり、唐突に新しいキャラクターが登場したりすることもあると思います。

既に公開されている『デュエプレ学園祭』のキービジュアルや、イベントシナリオを見ていただいてもわかる通り、今後新しい衣装を着たキャラクターがイベントに登場することも企画しています。


なので、既存のキャラクターが好きという方も楽しめるようなイベントが今後も開催されたり、シナリオに出てきたりすると思います。その中には、デュエプレならではの新しい試みも今後出てくると思います。
これはカード開発チームと一緒に、皆さんに楽しんでいただけるよう計画しておりますので、楽しみに待っていただけたらなと思います。

野島氏にとってのデュエプレとは


―――最後に一つだけ質問させてください。野島氏にとってデュエル・マスターズプレイスとは?

野島氏:
「PLAY'S(プレイス)」というタイトルにもある通り、「居場所」ですかね。元々このゲームが企画された意図に「いろんな遊び場があって、いろんな人の居場所になって欲しい」という思いがあって。

自分もデュエプレに携わる時、この話を聞かせていただいて。本当にいろんな人。それこそ本家デュエル・マスターズを辞めちゃった人、卒業しちゃった人や、もちろん今も遊んでくれている人、そして新しく入ってくる人の「居場所」となれるように尽力しています。